人の話を聞きまちがえるのは何の病気?
ご相談者様

人と話しているとき聞きまちがえることが増えて心配になっています。
相手の声は聞こえているのに、言われた内容を取り違えてしまうのです。
最近、職場の同僚にあきれられ、「病院で診てもらったら?」と言われてしまいました。私は何かの病気でしょうか?
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それはご心配でしょうね。いくつか可能性がありますから、状況を詳しく教えてください。
例えば、どんな聞きまちがえをしやすいのですか? -
そうですね……。例えば、私の名前は「佐藤」ですが、「加藤さん」という同僚が呼ばれたとき、自分が呼ばれたと思って返事をしてしまうことがあります。
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なるほど、「サ」と「カ」が区別できないことがあるわけですね。
カキクケコと、サシスセソの音は、どれも聞き取りにくいですか? -
聞き取りにくいというよりは、まちがえやすいと思います。
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わかりました。ほかにも、まちがえやすい音はありますか?
例えば、五十音でいうと、タ行やハ行の音を聞きまちがえることもありますか? -
そうですね……。けっこうあるような気がします。
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すると、まず可能性が高いものとして、高い音の聞こえが悪くなっている状況が考えられますね。
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どういうことでしょうか?
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音楽で、高い音階、低い音階と言いますね。
そういう音の高低を、科学的には「周波数」というもので表します。
そして、私たちが会話の中で口にする音にも、周波数の違いがあるのです。
あなたが聞きまちがえやすいカ行やサ行などの音は、ほかの音に比べると周波数が高い、つまり高い音に含まれます。 -
なるほど、そうだったのですね。
でも、高い音を聞きまちがえるのは、何が原因なのですか? -
ひとつの可能性としては、「難聴」があります。
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え、難聴ですか? 声はちゃんと聞こえているのですが……。
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ええ、難聴というと、音や声が聞こえないというイメージがありますよね。
でも、実際には一部の周波数帯、つまり一定の音域が聞こえにくくなることが多いのです。
耳鳴りや聞きまちがえは、聞こえにくさの結果として起こる症状のひとつです。
あなたは、耳鳴りがすることはありませんか? -
耳鳴りですか?今はしていませんが、ときどき気になることはありますね。
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耳鳴りというのは、難聴などで聞こえにくい音があるとき、脳で違和感が生じて感じる症状なのです。
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耳鳴りは、自分ではそれほど気にならないので、関係ないと思っていました。
では、難しい脳の病気とかではないのですね? -
言葉が明瞭に聞こえているのに意味がわからないという場合は、脳に問題があるケースもありえます。
例えば、認知症や聴神経腫瘍などです。
あなたの場合は当てはまらないと思いますが、聴覚検査をして難聴が認められなかった場合には、念のために脳のMRI検査を受けてみましょう。 -
わかりました。でも困ったな、難聴だなんて……。
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それでも、早めに相談にいらしてよかったと思いますよ。
難聴が治りにくいのは確かですが、対処法はありますから、いっしょに考えていきましょう。
まとめ
・音や声が聞こえにくくなるだけが難聴ではない
・耳鳴りを伴う難聴は、脳が違和感を感じている証拠
・聴覚検査をして難聴が認められなかった場合には脳検査の受診を