人工内耳の手術や手術後のリハビリとは、どのようなものですか?
ご相談者様

ある方から、人工内耳の手術というものがあるという話を聞きました。重度難聴なので検討したいと思うのですが、何もわからず不安がいっぱいです。手術の段取りや術後のリハビリなどについて教えてください。
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人工内耳の手術を検討されているのですね。人工内耳の手術は、全国の大学病院や総合病院で受けることができます。
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受けたい場合は、どうすればいいのでしょうか?
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かかりつけ医に相談してもいいですし、手術を実施している病院に直接連絡をとっても構いませんよ。「人工内耳友の会ACITA」さんが、手術を受けられる病院のリストをネットで公開されています。こちらを見てみられるといいかと思います。
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ありがとうございます。見てみます。
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では具体的な手術についてですが、まずは人工内耳の手術前の準備からお話ししましょう。
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よろしくお願いいたします。
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手術が決まると、手術の2か月ほど前から準備がスタートします。
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どんな準備が行われるのでしょうか?
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治療にあたるメンバーは、医師のほかに言語聴覚士がいます。医師と言語聴覚士が協力して、患者さんに人工内耳についてご説明したり、頭部のMRI検査をしたり、頭部に埋め込む体内装置の機種を選んだりといった準備を進めていきます。
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手術を受ける場合は、入院が必要になるのでしょうか。
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はい。準備が完了したら入院することになります。
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手術はどのような段取りで進むのでしょうか。麻酔をするのですよね?
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手術の際は、全身麻酔をします。まず耳介の後ろあたりを切開し、そこに体内装置を埋め込んで、電極を入れます。最後に、切開したところを縫い合わせて完了です。
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なんだか大きな手術みたいですね。どのくらいの時間がかかるのですか?
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2時間から3時間と思っておいていただければよいかと思います。
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手術が終わったあとは、すぐに自宅に帰れますか?
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いえ、人工内耳の手術のあとは、1週間から2週間ほど入院していただく必要があります。
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入院中はどんな生活になりますか?
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手術の翌日の朝にめまいが出なければ、食事をとっていただくことも可能ですよ。
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退院できるかどうかは、どこで判断するのですか?
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頭部の傷口がふさがったかどうかを見ます。
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縫合するということは、抜糸もしなければいけないんですよね。
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そうですね。最近は、抜糸が不要なケースもありますよ。「吸収性縫合糸」という、自然にとける糸を使って縫合すると、抜糸の必要がありません。
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それはいいですね。手術をすれば、あとは自然に聞こえるようになるのですか?
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その前に、「音入れ」という作業が必要です。これは、体外装置のスイッチを入れ、人工内耳を通して初めて音を聞く作業です。手術後、2週間から3週間ほどのタイミングで実施するものです。
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リハビリは、音入れの前に行うのですか?
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いえ、この音入れのタイミングから、言語聴覚士とともにリハビリを行っていきます。具体的には、音の聞こえ方を調整したり(マッピング)、人工内耳の音に慣れるための訓練をしたりします。
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リハビリは、どのようなことを行うのでしょうか? 時間がかかりそうですね。
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人工内耳から聞こえる音に、はじめは慣れないとおっしゃる方も多いですね。人間の声が機械の声のように聞こえるという表現をされる方もいます。
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これは、慣れるしかないのですか?
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そうですね。新しい音に脳がなじんでいけば、次第に相手が言っていることがわかるようになります。先ほど説明したマッピングという作業を、時間を置いて何度も繰り返しながら、音になじませていくのです。
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なるほど。少し我慢すれば、自然に聞こえるようになるのですよね!
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そのとおり。電話での通話もできるようになりますよ。安心して受けてくださいね。
まとめ
・人工内耳の手術後は、1週間から2週間ほど入院していただく必要がある
・手術後2週間から3週間ほどのタイミングで人工内耳の音入れという作業を行う
・人工内耳から聞こえる音に慣れるまで時間が必要です。個人差がありますが慣れれば電話での通話もできるようになる