耳鳴りの診断
耳鳴りは、疲労や寝不足などで体調を崩したときなどに、起こり得る症状です。また、大きな音を聞いたときも、一時的に耳鳴りがすることがあります。一過性の耳鳴りですぐに治まったような場合は、病院を受診するほどのことではありません。
ただし、めまいや吐き気を伴う激しい耳鳴りや、高音の耳鳴りが何日も続く場合をはじめ、耳鳴りが気になって生活になんらかの支障が出ている方は、ぜひ早めに受診してください。
多くの病的な耳鳴りは、難聴とともに表れていることが多く、早めに治療を始めないと難聴が悪化するリスクがあります。耳鳴りを起こす病気としては、メニエール病のほか、突発性難聴や、加齢による難聴などが疑われます。
ご本人が気づいていなくても、難聴によって耳鳴りが起こっている可能性は高いのです。診察では、まず耳、鼻、のどの状態を見て、炎症などの異常がないかを確認します。
耳鳴りの診断方法
ティンパノンメトリー(ティンパノグラム)

鼓膜の動きを調べる検査です。測定用の端末で耳の穴をふさぎ、外耳道の気圧を変化させながら、「ボーッ」という低音を鼓膜に反射させて動きを調べます。どの気圧のときに鼓膜が振動しやすいかで、中耳炎や外耳の詰まりなどがないかどうかわかります。
オーディオグラム(純音聴力検査)

耳にレシーバーを当てて測る気導聴力と、耳の後ろにバイブレーダーを当てて測る骨導聴力を調べ、検査の結果を図にします。気導聴力・骨導聴力ともにしっかり聞こえているか、よく聞こえない周波数(Hz)がないかなどがわかります。気導聴力だけ異常がある場合は外耳から中耳のトラブルが、どちらも同じ程度に悪いなら内耳のトラブルが疑われます。
生活困難度を測るTHI指数
【THI耳鳴障害度問診票】

じつは耳鳴りの診療では、カウンセリングがとても重要な位置を占めています。耳鳴りは、なかなか他人にわかってもらえない症状です。そのため、患者さんは一人で問題を抱えていることが少なくありません。
耳鳴りが原因で「うつ」になる人もいるのは、心の問題を伴う傾向があるからにほかなりません。ストレスや不安といった心の問題を取り除くと、耳鳴りが軽減することも多いのです。
原因不明の耳鳴りを診断する際は、聞こえる音の種類や大きさより、むしろご本人のつらさの度合い、生活困難度を評価することが大切なのです。
そのために使われているのが、THIというアンケート(問診票)です。
これは、日本耳鼻咽喉科学会でも紹介している国際標準のテストで、図のような25の項目について、患者さん自身に「よくある」=4点、「たまにある」=2点、「ない」=0点で回答してもらいます。その合計点から、0~18点なら「軽度」18~56点なら「中等度」、それ以上の場合は「重度」と評価します。
その結果を踏まえて、患者さん個々のつらさを把握し、治療プランを考えていきます。