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耳鼻咽喉科 渡辺医院

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2018年11月21日

耳鳴りが気にならなくなるTRT療法

耳鳴りの治療には、薬物療法、音響療法、心理的アプローチ、外科的な治療など、さまざまな治療法が用いられます。
その中でも、音響療法とカウンセリングを組み合わせた「TRT療法」が注目を集めています。

本コラムでは、つらい耳鳴りを気にならなくさせるためのTRT療法をご紹介します。

耳鳴りは脳で起こっている

耳鳴りが発生するメカニズムは、まだ解明されていない部分も多いのですが、基本的には内耳の「蝸牛(かぎゅう)」という器官に原因があるケースが多いと考えられています。
蝸牛は、外耳、中耳から伝わってきた音を電気信号に変換して聴神経に伝える役割を担っています。
受け取った信号を音と認識するのは脳です。

この蝸牛の機能が加齢や炎症によって阻害されると、聴神経に信号を伝える能力が衰え、ある高さの音の信号が伝わりにくくなってしまいます。
情報を受け取りにくくなった脳は、その高さの音に対する感度を上げて、補おうとするのです。
すると、その音の周波数帯にだけ脳の感度が上がっているため、静かなところで「耳鳴り」として感じるようになります。

耳鼻咽喉科では、耳鳴りの治療に補聴器が使われることがあります。
これは、音が全体的によく聞こえるようになると、耳鳴りの音がかき消されて気にならなくなるためです。

耳鳴りを軽減する音響療法

同じ理屈を用いて、耳鳴りを軽減するために、あえて他の音を聞くのが「音響療法」です。
仮に、患者さんが感じている耳鳴りの音の大きさを「10」とします。
そこに他の周波数の音を8~9程度の大きさで流すと、相対的に10に感じていた耳鳴りが他の音にかき消されて、あまり気にならなくなるのです。

音響療法は日常生活の中でも取り入れることが可能で、軽い耳鳴りであればテレビやラジオの音を流していれば、その音で耳鳴りの音が気にならなくなり、快適に過ごすことができます。
こうした音への慣れを応用した耳鳴りの治療法に「マスカー療法」というものがあります。
補聴器のような「サウンドジェネレーター」という装置で、不快に感じない程度の札音を1~2時間程度聞くという方法です。

音響療法をさらに発達させたTRT療法とは

この音響療法をさらに発達させたものが「TRT療法」です。
TRTとは、「耳鳴り再訓練法」あるいは「耳鳴り順応法」という意味合いで、医師によるカウンセリングとサウンドジェネレーターを使った音響療法を組み合わせた治療法です。
耳鳴りを消失させるのではなく、「順応」させることを目的としています。

・医師による、きめ細やかなカウンセリング

TRT療法では、まず医師がカウンセリングを行って、患者さん自身に耳鳴りや難聴のメカニズムを理解してもらうことから始めます。
患者さんの多くは、耳鳴りの症状を誤解していたり、不安を感じていたりすることがあります。
そこで、正しい知識と耳鳴りへの理解を深めてもらい、音響療法の効果をより高めることが目的です。
さらに、医師との対話を通じて不安が軽くなるため、「耳鳴りがする→耳鳴りがストレスになる→過度のストレスによって耳鳴りが悪化する」という悪循環を断つことも期待できます。

・患者さんに合わせたサウンドジェネレーターを用いた音響療法

カウンセリングが行われたら、患者さん一人ひとりに合わせた専用のサウンドジェネレーターを使った音響療法が始まります。
サウンドジェネレーターは日常生活の邪魔にならない形状をしており、家でも、外出先でも音響療法を行うことが可能です。

このカウンセリングと音響療法を両輪として行われるのがTRT療法です。

TRT療法で特に重要なのはカウンセリング

カウンセリングを行う医師は、患者さんの訴えに耳を傾けながら、治療に必要な知識や有用な情報を提供することに努めます。
耳鳴りに悩む患者さんは、耳鳴りを誤解したり、誤った知識にとらわれていたりすることがあります。
そうした状態が余計な不安を生み、症状の悪化につながっていることは多いので、カウンセリングの果たす役割は非常に重要なのです。

TRT療法では、耳鳴りを5つのカテゴリーに分類して治療が行われる

TRT療法は、耳鳴りの度合いや、難聴、聴覚過敏と言った、さまざまな要因から、患者さんを5つのカテゴリーに分けて治療が検討されます。

①耳鳴りがそれほど気にならない、比較的軽度の場合

耳鳴りの程度が比較的軽度の人の場合、日常生活の中の音を用いて耳鳴りを軽減させていきます。
例えば、できるだけ静かな環境を避け、テレビやラジオの音、常に音楽をかけておくなどがこれにあたります。

②耳鳴りが生活に支障をきたしている場合

専用のサウンドジェネレーターを使って、耳鳴りが気にならなくなるようにしていきます。

③耳鳴りの他に難聴も伴う場合

耳鳴り対応型の補聴器を使って音響療法を行います。

④聴覚過敏がある場合

音に敏感になっていますので、まずは小さな音を流すようにし、耳を音に慣らしていきます。

⑤音を聞くと耳鳴りが悪化してしまう場合

聞こえるか聞こえないかレベルの非常に小さな音を聞くことから始め、徐々に耳を慣らしていきます。

「耳鳴りが聞こえるのはなぜか」「自分が感じているのはどんな耳鳴りか」「どんな治療が行われるのか」といった内容について、医師と患者さんの間で対話を重ね、患者さんが耳鳴りを正しく理解してくれると、治療がうまく進むことは多いものです。

こうしたことから、TRT療法は、音響療法を併用したカウンセリングだと言っても過言ではありません。
患者さんが耳鳴りを正しく理解することによって、音響療法がより効果を発揮するようになるのです。

つらい耳鳴りに悩まれているなら、まずは耳鼻咽喉科を受診し、ご自身の症状について医師に相談してみてください。

渡辺医院院長 渡辺繁

東大病院耳鼻咽喉科助手、JR東京病院勤務を経て1988年に渡辺医院開業。日本耳鼻咽喉科学会専門医。日本耳鼻咽喉学会・日本めまい平衡医学会所属。

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