【後編】知っておきたい耳鳴りの6つの治療法
前編に引き続き、耳鳴りの治療法を3つご紹介していきましょう。
心因性の障害を軽減するカウンセリング
TRT療法に限らず、耳鳴り治療ではカウンセリングが重要です。
耳鳴りには「心理療法」という治療法もありますが、それは医師によるカウンセリングのことです。
一般に、カウンセリングを行う医師は、患者さんの訴えに耳を傾けながら、治療に必要な知識や、有用な情報を提供することに努めます。
耳鳴りに悩んでいる患者さんは、往々にして、耳鳴りを誤解したり、誤った知識にとらわれていたりすることがあります。
それが余計な不安を生み、症状の悪循環につながっていることは多いので、カウンセリングの意味は重大です。
「耳鳴りが聞こえるのはなぜなのか」
「自分が感じているのはどんな耳鳴りか」
「どんな治療をしていくのか」
こうした内容について対話を重ね、患者さんが耳鳴りを正しく理解してくれると、治療がうまく進むことが多いものです。
じつはTRT療法も、音響療法を併用したカウンセリングだと言えます。
患者さんが耳鳴りを正しく理解することで、音響療法も生きてくるのです。
音圧を聴く「中耳加圧療法」で鼓膜マッサージ
耳鳴り治療の3本柱として、①薬物療法、②音響療法、③カウンセリングを説明しましたが、そこに「物理療法」も併用すると、より効果的な耳鳴り治療になると私は考えています。
皆さんの中には、疲れたときや体調が優れないときに、マッサージを受けて疲労解消や機能回復を心がける人も多いと思います。
耳鳴りに対する物理療法にも、内耳の血流や代謝(水はけ)を促し、脳神経を癒すことで、耳鳴りが起こりにくいコンディションを整える意味があります。
その1つ、「中耳加圧療法」は、滲出性中耳炎の治療に使う鼓膜マッサージ機で、鼓膜に音圧をかける(ポコポコという音を聞く)ものです。
中耳、内耳のリンパのめぐりをよくし、メニエール病の改善や、難聴に伴う耳鳴りによい方法です。
難治のメニエール病には、手術で鼓膜に穴を開け、そこから鼓膜換気チューブを挿入する治療法もあります。
それも中耳加圧療法と呼ばれるのですが、「鼓膜マッサージ機による中耳加圧療法」は、手術ではありません。
耳の聞こえが気になる人なら、どなたでも気軽に行うことができます。
※鼓膜マッサージ機による治療は、チューブの先端についたイヤホンのような部分を耳にはめ、空気圧をかけて鼓膜をマッサージするもの。
光と電気の「キセノン温熱療法」で血行を促す
当院の患者さんたちに好評な物理療法として、「キセノン温熱治療」も紹介しておきましょう。
キセノン治療器は、光照射と温熱治療を兼ねたマッサージ器の一種です。
整形外科や治療院にも導入されている本格的な物理療法器具で、さまざまな痛みを伴う症状の治療に使われています。
通電治療も併用できるしくみで、3つの機能で体をほぐすことができます。
使い方は、ほかの治療器具と同じようにシンプルで、患部(耳鳴りの場合は頸部)に導子を当てて、10~15分、キセノン光で温熱をかけるだけです。
近赤外線を中心としたキセノン光は、体の深部まで温め、血行をよくする作用があります。
耳鳴りの場合、首の辺りにある星条神経節(自律神経系の交感神経が集まっているところ)の後ろに温熱をかけ、血行をよくすることで、内耳を含む頭部の代謝がよくなると考えられます。
こうした物理療法は、耳鳴り治療の柱とまでは言えませんが、脳に心地よさを与え、体調を整えることで、耳鳴りが起こりにくい状態を作るものです。

渡辺医院院長 渡辺繁
東大病院耳鼻咽喉科助手、JR東京病院勤務を経て1988年に渡辺医院開業。日本耳鼻咽喉科学会専門医。日本耳鼻咽喉学会・日本めまい平衡医学会所属。