耳鳴りに苦しむあなたに知ってほしい、「考え方」を変える方法
「耳鳴りに治療法はありません」「年齢のせいだよ」――そんな言葉をかけられて、落ち込んでしまった方もいることでしょう。
耳鳴りの多くはご自身にしか聞こえていない音ですから、ひとりで苦しみ、孤独を感じている方も多いはずです。
残念ながら、耳鳴りは一朝一夕で改善されるものではありません。
ただ、考え方を少し変えてみるだけでも、落ち込んだ気持ちが改善するかもしれません。
今回は、耳鳴りに苦しむ方に向けて、耳鳴りとともに暮らすための「考え方」についてご紹介します。
耳鳴りに対する否定的な考え方
耳鳴りが聞こえるあなたは、耳鳴りに対して否定的な考え方を持っており、ネガティブな感情を抱いてしまっているかもしれません。
否定的な考え方とはたとえば、以下のような考え方です。
・耳鳴りが治らなければ、このままゆううつな生活が続くのだろうか。
・耳鳴りがうるさくて眠れない日が多い。これから毎晩、ぐっすり眠れない日が続くのだろうか。
・友人とせっかく食事をしたのに、耳鳴りがひどく、思うように楽しめなかった。
・映画を観に行ったのに、耳鳴りの音がずっと聞こえていて、ストーリーや映像に集中できなかった。どんなに良い映画でも、映像がきれいでも、耳鳴りが治らないかぎりは楽しむことはできないだろう。
・スポーツの試合だったけれど、負けてしまった。チームのメンバーはみんな頑張ってくれたのに、私が耳鳴りのせいでゲームに集中できず、それで負けてしまった。私のせいでみんなに迷惑をかけてしまった。
・耳鳴りが気になって仕方ない。耳鳴りの本を読んだり、Webサイトを検索したりすると、「気にしないのが一番だ」と書いてあるのに、私はそれさえもできない神経質な人間だ。
こんなふうに考えてしまうことで、あなたの心は負の感情に支配されてしまいます。
不安や心配、つらい、何事にもやる気が起きない、気持ちが暗く沈んでしまう、孤独を感じる、イライラする、極端な方だと死んでしまいたいと思うこともあるので注意が必要です。
考え方ひとつで気持ちが楽に

耳鳴りをつらく感じ、ついついネガティブな考え方になってしまいがちです。
ただ、少しずつ以下のように、前向きな考え方に変えてみてはいかがでしょうか。
・耳鳴りには、いつか慣れるだろう。じっくり向き合ってみよう。
・昨晩はたまたま眠れなかったが、いつも最終的には眠れている。運動をするなどして、気持ちよく眠れるよう工夫しよう。
・耳鳴りはしていたが、友だちと会えて、一緒に食事できたことはうれしかった。
・すばらしい映画だった。少しずつ耳鳴りに慣れたら、きっと楽しめるようになるだろう。
・耳鳴りのせいで、試合では100%の実力を発揮できなかったが、一生懸命取り組んだ。負けたのは、私のせいだけではない。
・耳鳴りにはまだ慣れないし、どうしようもないときもあるが、少しずつ試行錯誤して対処してみよう。はじめはうまくいかなくて当然だ。
少しでもストレスを和らげてみよう
耳鳴りは、難聴などが原因で、音を聞き取ろうとする脳の感度が高まったために起こる症状です。
また、脳は生命の危機に関する音(アラームやサイレンのような音)や、興味が高いものに関する音(自分の名前や趣味に関すること)については、優先して聞き取ろうとする機能があります。
そのため、耳鳴りを不快に感じ、気にすればするほどよく聞こえてしまうようになるのです。
耳鳴りをストレスに感じるほど耳鳴りがよく聞こえてしまい、そのためによりストレスが高まってより耳鳴りを大きく感じてしまう。
耳鳴りに悩んでいる方は、そんな悪循環に陥ってしまいがちです。
そういった悪循環を断ち切るためには、ストレスの軽減が有効です。
ストレスを軽減するためのリラックス方法
ストレスを軽減するために、意識してリラックスしてみましょう。
たとえば、リラックスに効果的な「腹式呼吸」であればいつでも、どこでも試すことができます。
人間は、不安になると、浅く速い胸式呼吸をする傾向にあります。
それとは逆に、深くゆっくりとした腹式呼吸をすることにより、不安やイライラをやわらげることができます。
具体的な手順は以下のとおりです。
1 全身を楽にする
2 右手を胸に置き、左手をおなかの部分に置いて、左手だけが動くような呼吸をする
3 ゆっくりと1、2、3と数えて息を吸い込む。
4 ゆっくりと1、2、3と数えているあいだ、息を止める。
5 ゆっくりと1、2、3と数えながら息を吐く。
6 ゆっくりと1、2、3と数えながら息を止める。
これを繰り返します。
ポイントは、リラックスすること、少しずつ考え方を変えていくことです。
最初はなかなか慣れませんが、時間をかけてゆっくりと取り組みましょう。

渡辺医院院長 渡辺繁
東大病院耳鼻咽喉科助手、JR東京病院勤務を経て1988年に渡辺医院開業。日本耳鼻咽喉科学会専門医。日本耳鼻咽喉学会・日本めまい平衡医学会所属。