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耳鼻咽喉科 渡辺医院

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2018年6月6日

なぜ耳鳴りは苦痛なのか?耳鳴りを苦痛に感じるしくみ

耳鳴りに苦しむあなたは、どうして耳鳴りが苦痛なのか、考えてみたことがあるでしょうか。

実は音は、耳ではなく、脳で聞こえています。
この事実が、耳鳴りが苦痛であることに大きく関係しているのです。

今回は、耳鳴りが苦痛に感じられるのはなぜなのか、考えていきましょう。

「音の回路」と「苦痛を感じる脳」

アメリカの神経生理学者・ジャストレボフ博士は、「耳鳴りの神経学的モデル」を提唱しました。

こういうと難しく聞こえてしまいますが、つまりは、「耳鳴りがどうして苦痛なのか」を説明してくれたということです。
このモデルを一言でいうと、「音の回路」と「苦痛を感じる脳」の二つが結びつくことで、耳鳴りを苦痛と感じているということです。

この2つについて、それぞれみてみましょう。

音の回路とは

音は、脳のなかの「大脳皮質」という部分に届いてはじめて、音として聞こえます。

音を大脳皮質に届けているのが、脳のなかの「皮質下」という部分。
皮質下は、入ってきた音を大脳皮質に届ける、もしくは届けないという、取捨選択の役割を担っています。重要な音や生命維持にかかわる音は大脳皮質に送られ、不要だと判断された音は大脳皮質に届かないようになっているのです。

重要な音とは、どのような音でしょうか?
こんな経験はないでしょうか。
「繁華街の人ごみの中で、誰かが自分の名前を呼んでいるのが聞こえた」
「運転中、車内で音楽を聴いていたのに、遠くから近づいてくるパトカーのサイレンが聞こえた」
――これらは、皮質下がはたらき、「自分の名前を呼ぶ人の声」「パトカーのサイレン」を重要な音だと判断し、大脳皮質にまで届けたからあなたに聞こえたのです。

それに対して、冷蔵庫やパソコンが立てている音や、喫茶店で仕事をしているとき、席の隣の人の話し声は、意識しなければ聞こえないでしょう。
これは、皮質下が「この音は不要だ」と判断して、大脳皮質に送られる前に処理しているからなのです。

苦痛を感じる脳とは

苦痛を感じる脳と呼ばれるのは、「大脳辺縁系」と「自律神経系」です。
学生のとき、生物の授業で習ったことを覚えている方もいるのではないでしょうか。

大脳辺縁系は、脳のなかで、人間の原始的な感情を司っています。
つまり、不安やイライラ、怒りなどの感情です。

自律神経系は、自分の意志でコントロールすることができない身体の働きを司っています。
たとえば、消化などの内臓の働きや、汗の調整、血圧の上げ下げなどは自律神経系によって管理されています。
自律神経系は、「交感神経」と「副交感神経」の二つから成り立っています。
交感神経は、活動のための神経。
副交感神経は、リラックスのための神経だと理解するとわかりやすいでしょう。

交感神経が優位にはたらくと、興奮したり、緊張したりします。
副交感神経が優位にはたらくと、リラックスした状態になります。

これら二つが常にバランスを取っており、どちらか一方がはたらくと、もう一方は抑制されるしくみになっています。

「音の回路」「苦痛を感じる脳」と耳鳴り

耳鳴りが聞こえ始めると、皮質下はその音を「重要」と判断し、大脳皮質へと送ります。
なぜなら、人間は、変化を危険と感じる動物だからで、「耳鳴りが聞こえ始めた」という変化は重要なものだとみなされるからです。

その耳鳴りをあなたが「不快」と感じることで、「苦痛を感じる脳」である大脳辺縁系と自律神経系がはたらき、さらに耳鳴りが苦痛に感じられます。それによってあなたがイライラすることで、さらに「苦痛を感じる脳」のはたらきが活発になり、いっそうイライラする――これが、耳鳴りを苦痛に感じるメカニズムなのです。

渡辺医院院長 渡辺繁

東大病院耳鼻咽喉科助手、JR東京病院勤務を経て1988年に渡辺医院開業。日本耳鼻咽喉科学会専門医。日本耳鼻咽喉学会・日本めまい平衡医学会所属。

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