日本人の10%が経験者!? 多くの人が悩まされる「耳鳴り」
日本人の10%が経験者!? 多くの人が悩まされる「耳鳴り」
高齢になればなるほど、「耳」に悩まされる人は増えるものです。
たとえば、「聞こえ」の問題。
超高齢社会の日本では、1990年代にはおよそ30万台だった年間出荷台数が、近年は毎年50万台を超えるようになり、今なお増加傾向にあります。
厚生労働省の『国民生活基礎調査 平成25年版』によると、現在自覚している症状(複数回答)のうち、「耳の聴こえにくさ」を訴えている人の割合は、男性で約3%、女性で約3.5%に上っています。
その割合は高齢になるほど増え、さまざまな体の悩みのうちでも、65 歳以上の男性では3番目、75歳以上の男性では2番目に多い訴えが耳の聴こえにくさです。女性も関節の悩みのほうが上位にくるものの、耳鳴りを訴える人の数はむしろ男性より多くいらっしゃいます。
全人口の10~20%が悩まされる「耳鳴り」

そして、この聴こえにくさと重なることも多い「耳鳴り」には、男性の約2.6%、女性の約3.4%もの人が悩まされています。
耳鳴りそのものは、健康な人にもよく起こるありふれた症状です。耳鳴りを経験したことのある人は、全人口の10~20%とも言われます。
さらに65歳以上の人になると、30%近くの人が耳鳴り経験者だという報告もあります。
耳鳴りに悩まされている人は、実際たくさんいますが、耳鳴りを感じている人の割合となると、必ずしもはっきりした数字があるわけではありません。症状の性質上、耳鳴りを感じているかどうかは、基本的に本人にしかわからないからです。
また、常時耳鳴りに悩まされている人と、たまに気になるという人でも事情が違います。
一般に、耳鳴りがする人の割合は10~20%程度と言われており、私もそのように考えています。
でも、もっと少ないかもしれませんし、もっと多い可能性もあります。
治療用の補聴器を製作している会社が、2009年4月にインターネット上で耳鳴りについてアンケート調査をしたところ、「現在、自覚症状あり」と答えた人の割合が、約22%(3900人中873人)に上りました。

調査の性質上、耳鳴りに関心のある人が多く回答していると考えられますが、ひとつの参考にはなると思います。
このアンケートでは、耳鳴りが「常時鳴っている」という人は回答者のうち約23%、「時々、鳴る」という人は約50%でした。
多くの耳鳴りは、時間とともに消えていき、特に心配はいりません。ところが、「そのうち治る」と放置してしまい、いつの間にか慢性化させてしまう人が多いのも実情です。慢性的な耳鳴りとなると、病院に通って治療を受けても極めて治りにくく、「正しい治療」を受けないと一生、耳鳴りに悩まされることになりかねません。
また、耳鳴りはさまざまな病気に伴って起こることがあります。慢性的な重度の耳鳴りには脳の病気などが隠れていることもあり、甘くみることは禁物です。
耳鳴りについてもっと知ってほしい
では、耳鳴りが気になったら、どう対処すればよいのでしょう。そして、治療を受けているのによくならない耳鳴りは、どうしたら解消できるのでしょう。
私は、めまい・耳鳴りの専門家として、これまでに多くの患者さんを診てきました。そして、多くの方の耳鳴りを、従来とは異なるアプローチで解消し、聴こえづらさを気にせず日常生活を送れるようにして差し上げてきました。
実は耳鳴りについても、原因の見極めを誤って厄介にしてしまうケースや、間違った対処で症状を長引かせているケースが非常に多いのです。
このコラムコーナーでは、多くの方に耳鳴りをすぐ理解していただけるよう、ときに図版を用いてわかりやすく解説しています。そして、具体的な症例をもとに、耳鳴りの危険度を読者の皆さん自身がチェックできるようにまとめてあります。ぜひご一読になり、耳鳴りの度合いや原因別の正しい対処法を理解してください。
耳鳴りへの正しい対処法は、まだまだ知られていないのが実情です、このコラムを通じて多くの方が耳鳴りを正しく理解され、危険に正しく対処できるようになられるとともに、いち早く不快な症状から解放されることを願っております。

渡辺医院院長 渡辺繁
東大病院耳鼻咽喉科助手、JR東京病院勤務を経て1988年に渡辺医院開業。日本耳鼻咽喉科学会専門医。日本耳鼻咽喉学会・日本めまい平衡医学会所属。