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耳鼻咽喉科 渡辺医院

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2018年9月26日

【耳鳴りを引き起こす病⑤】遅発性内リンパ水腫

遅発性内リンパ水腫(ちはつせいないりんぱすいしゅ)という病気をご存じでしょうか。
あまり耳慣れない病名ですが、遅発性内リンパ水腫もまた、耳鳴りを引き起こす病気です。

本コラムは、耳鳴りの原因となる病気の一つ、遅発性内リンパ水腫についてご紹介します。

遅発性内リンパ水腫とは

遅発性内リンパ水腫とは、回転性めまい発作を起こす病気です。
その症状から、メニエール病とよく似ているとされています。

回転性めまいとは、自分自身か周囲のもの、もしくはその両方が動き、ぐるぐる回っているように見えるめまいです。
めまいには吐き気を伴ったり、平衡感覚を失ってしまったりします。

遅発性内リンパ水腫では、回転性めまい発作の前に、片耳、もしくは両耳に高度難聴、ないし全聾を発症します。難聴の症状の後、数年から数十年の時を経て、回転性めまい発作が起こります。

遅発性内リンパ水腫には、2種類あります。
難聴になった耳が原因になる「同側型」と、難聴になった耳とは反対側の耳に新たに難聴があらわれる「対側型」の2種類です。

「対側型」においては、めまいに加え、聞こえが良い側の耳に耳鳴りや新たな難聴が発生する場合があります。
このとき、耳鳴りや難聴は繰り返し起こります。
ときに軽くなったり、症状がまったく消えたりすることが特徴です。

遅発性内リンパ水腫とよく似た症状のメニエール病とは

遅発性内リンパ水腫の原因や検査、治療について説明するまえに、遅発性内リンパ水腫とよく似ている病気とされる「メニエール病」について簡単にご説明しましょう。

メニエール病とは、めまいが10分間から数時間にわたって継続し、それが何度も繰り返す病気で、ときには数年にも及ぶことがあります。

多くのメニエール病患者においては、めまいに伴い、耳鳴りや難聴、耳閉感(じへいかん:耳が詰まったように感じること)をともないます。
難聴は、高音が聞き取りにくくなる加齢性難聴とは異なり、低い音から聞こえにくくなることも特徴のひとつです。

メニエール病の原因になるのは、内耳にある内リンパ液が急激に増えることです。
内耳にある三半規管と蝸牛(かぎゅう)という器官は、リンパ液で満たされています。
三半規管は、身体のバランスを維持している器官で、蝸牛は、音を感じる器官です。

内耳のリンパ液が増えすぎることで、三半規管の機能が障害されてめまいが生じ、また蝸牛の機能が障害されて耳鳴りや難聴が起こるのです。

内リンパ液が急激に増えすぎてしまう原因としては、ストレスや睡眠不足、疲労などが挙げられます。

遅発性内リンパ水腫を引き起こす原因

遅発性内リンパ水腫の解説に戻りましょう。
遅発性内リンパ水腫の原因は、まだ完全には解明されていません。
ただ、難聴のある耳に異常が発生して内リンパ水腫が発生することで、めまいが起こると考えられています。

難聴そのものの原因になるのは、内耳炎や外傷、ウイルス感染などが挙げられます。

遅発性内リンパ水腫の診断のために必要な検査

遅発性内リンパ水腫の検査で主に行われるのは、聴力検査と平衡機能検査です。

聴力検査においては、片耳または両耳が高度難聴ないし全聾であるかどうかの検査をします。
平衡機能検査では、平衡機能の機能低下が認められるか否かを調べます。
補助検査として、内リンパ水腫を調べます。

また、遅発性内リンパ水腫の問診も行われます。
遅発性内リンパ水腫では、めまいは10分から数時間程度つづきます。
めまいの症状が出ているとしても、その持続時間が数秒、数十秒程度であれば、遅発性内リンパ水腫である可能性は低いと言えるでしょう。

遅発性内リンパ水腫の治療

遅発性内リンパ水腫の治療については、根治できる治療法はまだ見つかっていません。
現在のところ、メニエール病と同様、まずは薬を用いた薬物療法が実施されています。

内リンパ水腫を軽減させるためには、副腎皮質ステロイド薬やイソソルビドが使われます。
そして、めまいの発作の予防には、内耳のむくみを防ぐ利尿薬が使われます。

そうした治療によって有効性が認められなければ、内リンパを摘出したり、耳の奥に直接薬を投与したりするといった外科的治療が行われるケースも見られます。

また、発作を引き起こしている原因を突き止めるという方法もあります。
ストレスや生活習慣など、発作を引き起こすものを明らかにしたうえで、ストレス緩和や生活改善に関する指導が行われます。

難聴になった耳が原因になる「同側型」においては、めまいの抑制が治療の中心となります。
いっぽうで、難聴になった耳とは反対側の耳に新たに難聴があらわれる「対側型」では、聞こえのよい側の耳の聴力の保持が目的となります。
とくに対側型においては、聞こえのよい耳の聴力保持によって日常生活に支障をきたすことを避けるという目的が重視されています。

遅発性内リンパ水腫が疑われるなら迷わず病院へ

難聴がある方が、めまいを繰り返すようになったり、聞こえがよい耳が聞こえにくくなったりした場合には、遅発性内リンパ水腫が疑われます。
早期に医療機関に相談するようにしましょう。

渡辺医院院長 渡辺繁

東大病院耳鼻咽喉科助手、JR東京病院勤務を経て1988年に渡辺医院開業。日本耳鼻咽喉科学会専門医。日本耳鼻咽喉学会・日本めまい平衡医学会所属。

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