【耳鳴りを引き起こす病④】中耳炎
中耳炎とは、中耳に細菌が入り、膿がたまる病気です。
中耳炎は子どもがかかる病気だと思い込んでいる方もいるかもしれません。
しかし、中耳炎は、大人でもかかることがある病気です。
むしろ、大人がかかると、子どもの中耳炎に比べて重症になりやすく、また、長期化しやすい病気でもあります。
中耳炎もまた、耳鳴りの原因になりえる病気のひとつです。
今回は、耳鳴りの原因になる中耳炎についてご紹介します。
目次
中耳炎とはどんな病気?
耳は、顔の外側から順に、外耳(がいじ)、中耳(ちゅうじ)、内耳(ないじ)の3つの部位に分かれています。
中耳炎は、その名のとおり、その中の中耳にかかわる病気です。
中耳に細菌が入り、膿がたまることで中耳炎になります。
症状としては、耳が痛くなったり、耳垂れしたりといったことが挙げられます。
耳垂れとは、耳から膿が出てくることをさします。
一般に中耳炎は、子どもがかかりやすい病気として知られます。
実際に、生後半年から2歳くらいまでの子どもがかかりやすく、これは幼い子どもは抵抗力が弱いためです。
成長するにつれて抵抗力がつき、中耳炎にもかかりにくくなります。
また、耳の中にある耳管(じかん)は、大人の場合子どもと比べて長く、傾斜もついています。
そのために、鼻から耳へと細菌が移動しにくいことも、大人が中耳炎にかかりにくい理由のひとつとなっています。
中耳炎にともない、合併症を引き起こすこともあります。
内耳炎、脳膿瘍、髄膜炎、耳性顔面神経麻痺などがよくみられる合併症です。
大人の中耳炎は重症になりやすい
子どもの中耳炎はさほどでもないのですが、大人が中耳炎にかかると、重症になりやすいものです。
大人の中耳は子どもの中耳と比較して広いため、膿が多く溜まってしまうことがその理由です。
中耳炎を引き起こす様々な原因
多くの場合、中耳炎の原因になるのは風邪です。
これは子どもの場合も同様で、特に鼻風邪や副鼻腔炎といった症状があると、中耳炎に結びつきやすいとされています。
また、そのほかに、航空性中耳炎という中耳炎があることをご存じでしょうか。
これは、飛行機に乗ったことによって引き起こされる中耳炎です。
高度の高いところにいて気圧が変化することによって、中耳の中の圧力と外の気圧に差が生じて、耳の機能が低下することが原因です。
揺れが激しく気圧の変化が大きいときや、鼻炎や風邪などにかかっていて鼻の調子が悪いときにかかりやすいと言われています。
風邪、飛行機に加えて、鼻のかみすぎによって中耳炎にかかることもあるほか、激しい運動の後の飲酒が中耳炎を招くケースもあります。
運動をして体温が急上昇するうえ、飲酒によって血行がよくなると、炎症を起こしやすくなるのです。
2種類の中耳炎 その特徴は?
中耳炎には、2種類あります。
急性中耳炎と、滲出性(しんしゅつせい)中耳炎です。
まず、急性中耳炎をご紹介しましょう。
急性中耳炎は、大人がかかる中耳炎として一般的なものです。
短期間で症状が消えることが多いとされています。
急性中耳炎の症状としては、耳垂れや発熱、耳の痛み、高熱、頭痛、耳の聞こえが悪くなる、耳が詰まっているような感じがする、音がくぐもって聞こえるなどが挙げられます。
もう一方の滲出性中耳炎は、鼓膜の奥にある中耳腔という場所に液がたまることによって起こります。
滲出性中耳炎では、先に説明したような、耳の痛みや頭痛、高熱、耳垂れといった症状があらわれません。
そのため、中耳炎だと気付かれにくく、重症化してしまったり、長期化してしまったりしやすい中耳炎です。
滲出性中耳炎では、難聴の症状があらわれます。
いつもと同じ大きさで音楽を聞いたり話をしたりしているはずなのに聞こえづらくなったら、滲出性中耳炎を疑ってもいいでしょう。
同時に、耳の中でガサガサという音がしたり、耳がふさがっているような感じがしたりする方もいます。
中耳炎に有効な治療法
中耳炎を発症したとき、その重症度によって、異なる治療がほどこされます。
・中耳炎が軽症の場合
重症でない場合には、数日間かけて経過観察されることが多いです。
それで改善することが多いのですが、数日ののちに改善がみられなければ、抗生剤が投与されます。
この場合、内服薬が処方されることもあれば、座薬や注射が選択されるケースもあります。
・中耳炎が重症の場合
重症であることがわかれば、経過観察はされず、抗生剤を服用します。
抗生剤による治療が困難な場合には、鼓膜を切開して膿を出す手術が選択されます。
中耳炎だと思ったらすぐに耳鼻咽喉科で受診を
中耳炎の可能性が疑われるときには、すぐに耳鼻咽喉科を受診するようにしてください。
治療が遅れることによって症状が悪化することもありますし、中耳炎ではなく、メニエール病や突発性難聴などの病気である可能性もあります。
多くの場合において、すぐに治療を受ければ、数日で治ることが多い中耳炎。
それでも、重症であれば、完治まで数カ月ほどもかかるケースもあります。
いずれにしても早めに医師の治療を受けることが、完治への近道と言えるでしょう。

渡辺医院院長 渡辺繁
東大病院耳鼻咽喉科助手、JR東京病院勤務を経て1988年に渡辺医院開業。日本耳鼻咽喉科学会専門医。日本耳鼻咽喉学会・日本めまい平衡医学会所属。