【耳鳴りを引き起こす病②】内耳炎
内耳炎もまた、耳鳴りを引き起こす病気のひとつです。
今回は、そんな内耳炎の基礎知識や治療法などをご紹介します。
内耳炎とは
内耳炎とは、内耳で起こる炎症の総称です。
内耳とは、耳の部分の名称です。
いわゆる「耳」と呼ばれるところから、耳は、外耳、内耳、中耳に分かれています。
耳のそのほかに起こる炎症、外耳炎や中耳炎に比べると、発症する確率はさほど高いものではありません。
しかし、ひとたび内耳炎が発症してしまうと、後遺症がのこり、生活に支障をきたすこともあります。
内耳炎の原因
内耳炎は、中耳炎の発症が原因となっています。
内耳は、耳の奥にある部分ですから、耳の穴から入ってきた細菌やウイルスの影響を受けることはほとんどない器官なのです。
ここで、中耳炎の原因についても見ておきましょう。
中耳も、内耳と同様に、耳の穴から入ってきた細菌やウイルスに感染することはまれです。
中耳炎は、風邪などの感染症にかかることで感染する病気です。
耳は、耳管というパイプによって喉や鼻とつながっています。
この耳管を通して、ウイルスが中耳にまで入ってきてしまうのです。
こうして発症した中耳炎が放置されたり、重症になったりすると、中耳炎が内耳にまで波及してしまい、内耳炎にかかってしまうのです。
ただし、こうして起こる内耳炎は、近年減ってきているとも言われています。
内耳炎の症状
内耳炎にかかると、身体の平衡感覚を司る三半規管や、聴覚を司る蝸牛(かぎゅう)が影響を受けます。
つまり、音とバランス感覚の機能がうまく働かなくなってしまうのです。
それによって、耳鳴りや難聴、めまいといった症状があらわれます。
これらが単独であらわれることもあれば、併発することもあります。
難聴については、徐々に進行していくものと、急激に悪化してしまうもの、突然聞こえなくなってしまうものなど、さまざまなパターンがあります。
その程度もさまざまで、まったく聞こえない状態になってしまうこともあれば、少し聞き取りづらい程度で、日常生活には支障がないような状態になる方もいます。
めまいについては、ぐるぐると回るような感じがする回転性めまい、発作性のめまい、持続性のめまい、動揺感や浮動感がある程度のものなど、こちらもさまざまです。
ただしめまいは一過性のもので、すぐになくなります。
強いめまいが突然あらわれることで、耳鳴りや難聴、吐き気、耳の痛みといった症状が同時にあらわれるケースもあります。
内耳炎の種類
内耳炎には、いくつかの種類があります
この種類分けは、発症の原因によるものです。
内耳炎の種類を3つご紹介しましょう。
・中耳炎性内耳炎
中耳炎性内耳炎は、内耳炎の発症原因として最も多いものです。
簡単にいえば、中耳炎が発症することで起こる内耳炎です。
この中でも、急性中耳炎が発症原因のものと、慢性中耳炎が発症原因のものがあります。
急性中耳炎が発症原因のケースでは、一時的に聴力が低下し、中耳炎と内耳炎が治ると同時に聴力も元に戻ります。
一方、慢性中耳炎が原因の内耳炎では、聴力が回復しないままというケースもありえます。
・ウイルス性内耳炎
ウイルスに感染することで発症する内耳炎を指します。
たとえば、インフルエンザ、おたふく、はしかなどです。
ウイルス性内耳炎では、人の声や音を認識することは可能です。
ただし、感音難聴という、蝸牛や聴神経がうまく機能しなくなる難聴を発症し、二度と回復しないこともあります。
・髄膜炎性内耳炎
髄膜炎性内耳炎とは、髄膜炎が原因になって起こる内耳炎です。
髄膜炎とは、脳や脊髄を包む髄膜が炎症を起こす病気のことをいいます。
髄膜炎性内耳炎においても、感音難聴にかかってしまうと、回復しないことも多いとされています。
内耳炎の治療法
内耳炎の治療では、一般には、薬物療法が実施されます。
内耳炎の原因成っている細菌やウイルスを取り除くために、抗生物質や抗菌薬、ステロイド薬などが用いられます。
内耳炎といっても症状はさまざまです。
頭痛や発熱などが生じているときには、解熱鎮痛剤が投与されるケースがあります。
内耳の機能の低下を改善するために投与されるのは、ビタミン剤やステロイドです。
また、前述した慢性中耳炎が内耳炎を引き起こしている場合には、手術が実施されるケースもあります。
このように、内耳炎の治療法としては、薬物療法や手術があります。
ただし、内耳が障害されてしまうと、回復には長い時間を要します。
内耳炎は、一度かかってしまうと治療が難しい病気だということを理解していただけたでしょうか。
ですから、まずは内耳炎にかからないように注意することが何より重要だといえるでしょう。
そのためには、耳がなんだかおかしいと感じたり、めまいやふらつき、耳鳴りなどがあらわれたりしたときには、すぐに医療機関に相談するようにして、内耳炎の原因になりえる病気の治療や予防を第一に考えるようにしてください。

渡辺医院院長 渡辺繁
東大病院耳鼻咽喉科助手、JR東京病院勤務を経て1988年に渡辺医院開業。日本耳鼻咽喉科学会専門医。日本耳鼻咽喉学会・日本めまい平衡医学会所属。