あなたは知っている? 耳と耳鳴りの基礎知識
耳は、自分からは見えません。
耳鳴りになるまで、耳という器官に注意を払ったことがなかったという方も多いのではないでしょうか。
あまり知られていませんが、耳鳴りは全年齢層の2割超、50歳代で3割以上、65歳以上に限れば7割近くの人が一度は経験している症状です。
本コラムでは、総論的に、耳と耳鳴りの基礎知識をまとめていきます。
普段意識することのない自分の耳について、よく知るきっかけにしてください。
耳の役割とは?

耳は外から見える音を集めて脳へと伝えています。
さらに、耳の中には「半規管(はんきかん)」という器官があり、音だけでなく、身体のバランスを保つ役割を担っています。
一見すると、顔の横に「耳」があって穴が開いているだけという、なんともシンプルな構造に見えるかもしれません。
しかし、実は非常に複雑な構造で、重要な役割を担っているのです。
そもそも耳鳴りってどんなもの?
まったく静かな部屋に一人で身を置いたとき、キーンという音が聞こえるように感じることがあるでしょう。これは多くの人が経験する耳鳴りですが、その音を気に留める人はほとんどいないと言っていいでしょう。
なぜならそれは一過性のものであり、ちょっと違和感を抱いたとしても、すぐに気にならなくなる種類の耳鳴りだからです。
それに対して、何日間も、何年間も耳鳴りが続き、鳴り止まない人や、鳴りの音が強くなったり、弱くなったりという症状を経験する人もいます。
そうした人たちは、耳鳴りによって不快感を抱いたり、不安な気持ちが持続したりして、それがストレスとなって積み重なってしまうことも多いのです。
こんなにある!耳鳴りの原因
では、耳鳴りはどのようなときに起こるのでしょうか。
いったい何を原因として起こるのでしょうか。
多くの耳鳴りは、内耳から大脳皮質の障害によって引き起こされる感音難聴(かんおんなんちょう)によるものとされていますが、その他にも、以下のような原因が考えられます。
・耳の病気に起因する耳鳴り

主には外耳の病気、中耳の病気、内耳の病気、聴神経や中枢感覚路の病気によるものが挙げられます。
また、心因性の病気や更年期障害に起因するもの、薬物障害を原因とする耳の病気もあります。
・高血圧症や低血圧症に伴う耳鳴り

高血圧症や低血圧症がある方は、耳鳴りをご自身の高血圧・低血圧の症状と結びつけて考え、不安を増幅させてしまうケースがあります。
・睡眠不足や身体的疲労、精神的疲労(ストレス)による耳鳴り

耳鳴りを訴える方の多くは、睡眠不足だったり、疲れていたり、ストレスが蓄積しているときに、より強い耳鳴りを感じるという方も少なくありません。
さらに、耳鳴りによってその睡眠不足や身体的疲労、ストレスがさらに強いものになってしまうという悪循環もみられます。
このように、さまざまな原因が考えられる耳鳴りですが、検査をしても結局原因がわからないことも多いのです。
ここまで耳の構造や機能、耳鳴りの原因についてご紹介してきました。
しかし、耳鳴りには、まだ解明されていないことがたくさんあります。
自分の症状について知ることは、ストレスをやわらげることにもつながるもの。
不安なことがあれば、耳鼻科の医師に相談することをおすすめします。

渡辺医院院長 渡辺繁
東大病院耳鼻咽喉科助手、JR東京病院勤務を経て1988年に渡辺医院開業。日本耳鼻咽喉科学会専門医。日本耳鼻咽喉学会・日本めまい平衡医学会所属。