更年期障害と耳鳴り
更年期障害と聞いて思い浮かべるのは、どのような症状でしょうか。
頭痛や不眠、ほてり、食欲不振などでしょうか。
これらのほかによく聞かれる症状が、耳鳴りやめまいです。
今回は、更年期障害の症状としての耳鳴りについて解説します。
更年期障害の耳鳴り
更年期障害の症状としての耳鳴りについては、女性ホルモンの量が低下して、それが原因となって自律神経の働きが狂ってしまい、耳鳴りを生じていることがあります。
それに加えて、ストレスなどが原因の心因性の耳鳴りや、突発性難聴の症状のひとつとしてあらわれている耳鳴りもあります。
そもそも更年期障害とは、40代半ばくらいから起こる、女性ホルモンの減少を原因としたさまざまな不調のこと、その中で特に日常生活に支障が及ぶ不調のことを言います。
では、女性ホルモンが減少すると、どのようなことが起こるのでしょうか。
女子ホルモンの分泌を司っているのは、脳下垂体です。
脳下垂体のすぐそばには、自律神経の中枢があります。
そのため、ホルモン分泌が正常でなければ、自律神経にも影響が及んでしまうのです。
ですから、女性ホルモンの分泌がうまくいかないと、自律神経が司っている様々な調整機能が狂ってしまい、耳鳴りが起こってしまうのです。
同様に、更年期障害でなくとも、生理中や妊娠中に耳鳴りを感じる方もいます。
更年期障害による耳鳴りの原因
更年期障害の症状としての耳鳴りの原因は、主に以下のようなものがあります。
・ストレス
更年期障害が起こる世代は、家庭でも、仕事や近所づきあいなど社会においても、何かとストレスを感じる場合が多いものです。
強いストレスを感じると、自律神経の乱れにつながり、結果として耳鳴りやめまいなどが起こることがあります。
加えて、耳鳴りによって感じるストレスが、さらに耳鳴りの症状を悪化させることもあります。
・高血圧
高血圧によって耳鳴りが引き起こされることもあります。
高血圧によって耳のまわりの血管が硬くなってしまい、血の流れが悪くなると、その音が耳鳴りとして聞こえるのです。
高血圧は40代以降になると注意が必要な症状のひとつ。放置すると、動脈硬化や脳卒中を引き起こし、命を脅かすこともあります。
耳鳴りの症状が出たら、こうした症状にも注意が必要だといえるでしょう。
・聴力の低下
聴力は、加齢とともに低下するもの。
加齢とともに音が聞こえにくくなることで、音を聞き取るために脳が感度を上げます。
すると、脳の電気信号まで聞こえてしまい、それが耳鳴りとして認識されるケースがあります。
・病気
耳鳴りは、メニエール病や突発性難聴の症状としてあらわれることがあります。
・めまい
更年期障害の症状のひとつである、めまい。耳鳴りは、めまいとともに生じることもあります。
めまいにかかわる平衡感覚と、耳鳴りにかかわる聴覚を司る器官が近接しているため、影響が及びやすいからです。
更年期障害の耳鳴りの改善方法
更年期障害の耳鳴りを改善するためには、さまざまな方法が提案されます。
それぞれ解説しましょう。
・ストレス発散
先述したとおり、ストレスが耳鳴りの原因になることがあります。
その場合は当然、ストレスを軽減することが改善のカギとなります。
睡眠を十分にとったり、規則正しい生活を心がけたり、適度な運動をしたりすることが有効でしょう。
・血行改善
血行不良が原因になっている場合には、血行改善が効果的でしょう。
とくに、耳の周囲の血行を改善すれば、耳鳴りの改善が期待できます。
蒸しタオルであたためる、血流をよくするツボを刺激するなどの方法があります。
・補聴器の使用
聴力の低下によって耳鳴りが発生している場合は、聞こえを改善することによって耳鳴りが聞こえにくくなるでしょう。
聞こえを改善するためには、補聴器が有効です。
「補聴器を使うのは恥ずかしい」という方もいますが、近年、補聴器は進歩しています。
補聴器だとわかりづらいものもありますし、使う人によってさまざまな調整が可能です。
一度、医療機関で相談し、フィッティングしてみることをおすすめします。
・薬の投与
薬の処方によって耳鳴りが改善されることもあります。
メニエール病や突発性難聴が原因になっているケースにおいては、ステロイド剤や抗めまい薬などが処方されます。
また、漢方薬や抗不安薬なども、症状にあわせて処方されることがあります。
注意が必要な耳鳴り
耳鳴りの裏には、注意が必要な病気が隠れていることがあります。
「耳鳴りくらい、気にしない」と思わず、注意が必要な症状を覚えておいてください。
・めまいや難聴をともなう耳鳴り・・・メニエール病の可能性があります。
・耳が聞こえづらい・・・突発性難聴の可能性を疑いましょう。
・めまい、動悸、頭痛、肩こり、呼吸困難をともなう耳鳴り・・・高血圧かもしれません。
こうした症状があらわれる場合には特に、早急に医療機関に相談してください。

渡辺医院院長 渡辺繁
東大病院耳鼻咽喉科助手、JR東京病院勤務を経て1988年に渡辺医院開業。日本耳鼻咽喉科学会専門医。日本耳鼻咽喉学会・日本めまい平衡医学会所属。