“メニエール病”とは
著名な歌手が自身の病を告白したことから、その名が浸透したメニエール病。
病名を耳にしたことはあっても、いったいどのような症状で、何が原因で起こる病気なのか、知らない方が多いのではないでしょうか。また、「メニエール病=めまい」というイメージを持っていたり、女性特有の病気だと思っていたりする人もいるでしょう。
メニエール病とはどのような病気なのか、何を原因として起こるのかをご紹介します。
初期症状は耳の違和感から
メニエール病は、前兆なく突然発症することがあります。
初期症状には、耳鳴りや難聴、耳が詰まった感じ(耳閉感:じへいかん)、突然のめまいなどが挙げられます。この場合のめまいは、回転性めまい(目がぐるぐる回ったり、天井が回っているように感じられるめまい)がほとんどですが、まれに浮動性のめまい(体がふわふわ浮いていたり、ゆらゆら揺れていたりするように感じられるめまい)が起きることもあります。また、立っていられないほどの激しいめまいに見舞われたときは、吐き気や動悸、冷や汗を伴うケースもあるので注意してください。
メニエール病のめまいは、数十分から長くても数時間ほどで収まります。しかし、それが何度も繰り返され、繰り返されるたびに耳の症状は悪化していくことが多く、とても厄介なものです。「もう慣れたから」「いつもの症状だから問題ない」と治療を受けずに放置しておくと、たとえめまいは治ったとしても、耳鳴りや難聴の症状が残ることがあるので注意しましょう。
メニエール病の原因は耳の中にある
メニエール病の原因は、ずばり内耳のリンパ液が増えすぎることにあります。
詳しく説明しましょう。

外側から外耳(がいじ)・中耳(ちゅうじ)・内耳(ないじ)の3部分に分けられる耳。
内耳は、耳の中で最も奥に位置しており、そこには、音を聴く役割の蝸牛(かぎゅう)と体の平衡を保つ役割の半規管と耳石器(じせきき)があります。これらの器官はいずれもリンパ液で満たされており、音は空気の振動として内耳に伝えられ、このリンパ液が振動することで音として認識されるのです。
内耳のリンパ液は、ふだんは一定の量に保たれています。ただ、何らかの理由によってリンパ液が増えると、内リンパ水腫という水ぶくれができ、聴覚や平衡感覚がくるってしまいます。それが耳鳴りや難聴、めまいといった症状につながってしまうのです。
男女ともに働き盛りの年代に患者が多く、ストレスがきっかけになるとは言われていますが、原因はいまだ特定されてはいません。
メニエール病は、ぐるぐる回るめまいのことではありません。耳鳴りや耳閉感といった耳の症状と回転性めまいの症状が併発したら、メニエール病を疑ったほうがいいでしょう。
患者さんの中には、我慢したり、慣れてしまったりで放置してしまう方がいますが、慢性的な耳の病気につながる可能性があるのでやめましょう。
耳鳴りや耳閉感と、回転性めまいの症状があらわれたら、耳鼻科に相談するようにしてください。

渡辺医院院長 渡辺繁
東大病院耳鼻咽喉科助手、JR東京病院勤務を経て1988年に渡辺医院開業。日本耳鼻咽喉科学会専門医。日本耳鼻咽喉学会・日本めまい平衡医学会所属。