糖尿病の方は要注意! 低血糖が招くめまい
「血圧もめまいに関係する?」の記事では、血圧とめまいの関係についてご紹介しました。
薬との関連でいえば、糖尿病で血糖値を下げる薬を飲んでいる方も、薬の効きすぎに気をつけていただきたいと思います。
今回は、低血糖が招くめまいについてご紹介いたします。
血糖値を下げる薬を飲んでいる方もご注意を
なぜ私は、糖尿病で血糖値を下げる薬を飲んでいる方にも注意喚起をするのか。
それは、めまいは、血糖値が下がりすぎた場合にも起こるからです。
私たちの体は、血液中のブドウ糖(炭水化物・糖質が分解・吸収された栄養素)を細胞に取り込んでエネルギー源にしています。
このとき、細胞へのブドウ糖の取り込みに必要とされるのがインスリンというホルモンです。
糖尿病の人は、このインスリンの分泌や働きが悪くなっています。
高血圧と同様、わが国には糖尿病の患者さんもたくさんいますから、その治療として血糖値を下げる薬を飲んでいる人もたくさんいらっしゃいます。
血糖値を下げる薬にもいろいろありますが、最も基本的なのはインスリンの分泌を促す薬です。
この薬は、膵臓に働きかけてインスリンを出させ、インスリン分泌不足を補う薬です。
インスリンの分泌を促す薬について、以下にまとめておきましょう。
スルホニル尿素薬(SU薬:えすゆーやく)
一般名:グリベンクラミド(ダオニール、オイグルコン)、グリクラジド(グリミクロン)、グリメピリド(アマリール)など
作用:膵臓のβ細胞を刺激してインスリンの分泌を促進する
主な副作用:低血糖、体重増加など
速効型インスリン分泌促進薬(グリニド薬)
一般名:ナテグリニド(ファスティック、スターシス)、ミチグリニドカルシウム水和物(グルファスト)、レパグリニド(シュアポスト)など
主な副作用:低血糖など
特徴:食後の高血糖の是正に適している、食事の直前に飲む薬です。内服後すぐに効果が出始め、短期間作用して血糖値を下げることも特徴です。
DPP-4(ディーピーピーフォー)阻害薬
一般名:シタグリプチンリン酸塩水和物(ジャヌビア、グラクティブ)、ビルダグリプチン(エクア)、トレラグリプチンコハク酸塩(ザファテック)、オマリグリプチン(マリゼブ)など
作用:膵臓に作用するホルモン(インクレチン)の分解を抑制し、その作用を助ける
主な副作用:低血糖、便秘など
特徴:毎日内服するタイプの薬(シタグリプチンリン酸塩水和物(ジャヌビア、グラクティブ)、ビルダグリプチン(エクア)など)と、週1回内服するタイプの薬(トレラグリプチンコハク酸塩(ザファテック)、オマリグリプチン(マリゼブ))があります。また、体重が増加しにくいことも特徴です。
以上のように、糖尿病の方が服用する、インスリンの分泌を促す薬には、スルホニル尿素薬、速効型インスリン分泌促進薬、DPP-4阻害薬などといった薬があります。
薬の効きすぎで起こる「低血糖」発作
この薬が効きすぎるとどうなるのでしょう。
血糖値が下がりすぎて「低血糖」という発作を起こしてしまうのです。
血糖値が急速に低下して起こる低血糖の症状は、手指のふるえや動悸、顔面蒼白、頻脈、発汗、不安などが挙げられます。
症状によっては、意識障害が起こり、昏睡に陥ることさえある、注意が必要な症状です。
低血糖発作は、糖尿病の薬が効きすぎてインスリンが過剰に分泌された場合や、食事をしていなくて血液中のブドウ糖が少ないのに、いつもどおり薬を飲んでしまった場合などに起こります。
糖尿病の患者さんは、低血糖の発作を起こした場合も糖尿病を専門とする先生方がケアされますから、通常、耳鼻科にはいらっしゃいません。
しかし、患者さんの自己診断という観点から、少し補足させていただきました。

渡辺医院院長 渡辺繁
東大病院耳鼻咽喉科助手、JR東京病院勤務を経て1988年に渡辺医院開業。日本耳鼻咽喉科学会専門医。日本耳鼻咽喉学会・日本めまい平衡医学会所属。