耳鼻科でめまいの治療が行われるのはなぜ?
めまいがひどくて病院を受診するとき、何科の病院に行けばよいのか、すぐに答えられる方は少ないのではないでしょうか。
脳に原因があるかもしれないから脳神経内科?それとも内科?ストレスが原因のようだから心療内科?どれも間違いではないものの、正解ではありません。
めまいの原因は多岐にわたりますが、実は、めまいのおよそ8割が耳の中の「内耳」という部分の障害によって起こるといわれています。
めまいの原因になる耳が原因の病気
めまいを引き起こす原因になる耳の病気には、以下のようなものが挙げられます。
メニエール病
メニエール病は、内耳のリンパ液は増えすぎることによって起こります。主な症状は、目の前がグルグルと激しく回る、回転性のめまい発作が突然起こることなどが挙げられます。
それが30分から長い場合で6時間程度続くこともあります。耳鳴りや難聴が表れることも珍しくなく、これらの症状が繰り返し起こるのが大きな特徴です。
耳鼻科では、内耳のみならず、脳や内臓なども検査し、メニエール病であるかどうかを判断します。脳や内臓に問題がなく、内耳のみに問題がある場合はメニエール病の疑いがあると診断されます。
メニエール病の治療には、主に薬物療法が用いられ、抗めまい薬、吐き気止め、血管拡張薬、ビタミン剤、利尿剤などが処方されます。
良性発作性頭位めまい症
良性発作性頭位めまい症は、三半規管の中に耳石が入り込むことで起こりますが、この耳石が三半規管から出ていくと、めまいも収まります。
頭を動かすとめまいが生じるのですが、こうしためまいが起こる姿勢を繰り返しているうちに、慣れが生じて気にならなくなっていきます。
このような特徴から、良性発作性頭位めまい症の治療には、運動療法が中心となります。
前庭神経炎
前庭神経炎は、吐き気とともに激しい回転性のめまいが起こり、その「急性期」が2~3日にわたって続きます。
その間は、めまいを抑える薬や吐き気止めを処方し、安静を保ちます。
症状がひどいケースでは、入院しなければならなくなったり、ステロイド薬で内耳の炎症を抑えたりすることもあります。
急性期を過ぎても、軽いめまいやフワフワする感覚がしばらく続き、その間は、症状に合わせて内耳の血流をよくする循環改善薬や抗不安薬が処方されることがあります。
突発性難聴
突発性難聴でも激しいめまいが起こることがあります。発作が繰り返されることはなく、めまいが治まっても難聴や耳鳴りといった症状が残ってしまうことがあります。
突発性難聴は早期治療が鉄則で、少しでも早く治療を開始しなければなりません。
発症してから48時間以内に治療を始めた場合は回復する確率が高いですが、遅くとも1週間以内に治療を受けてください。
発症後、約1カ月で聴力が固定してしまうと考えられており、それ以降だと聴力を取り戻すことは困難だとされています。
外リンパ瘻(ろう)
外リンパ瘻は、内耳に穴があき、内耳を満たしている外リンパ液が中耳に漏れ出してしまう病気で、めまい・難聴・耳鳴りといった症状が起こります。
原因は、交通事故による衝撃、水中ダイビング、頭を強く打つ、くしゃみや咳、強く鼻をかむ、トランペットなどの楽器の演奏、重い荷物を持ち上げたり運搬したりなど、多岐にわたります。
その治療法ですが、まず薬を使った保存的治療法が行われ、症状が改善しない場合は、内耳の穴をふさぐ手術が選択されます。
慢性中耳炎
慢性中耳炎が進行すると内耳が炎症を起こし、耳漏や難聴とともに、めまいが起こることがあります。
治療には点耳薬が用いられるほか、症状の進行によっては手術が行われる場合もあります。
めまいに加えて「耳鳴り」「難聴」「耳閉感」が伴うようなら迷わず耳鼻科へ
めまいがひどくて病院を受診するとき、何科の病院に行けばよいのでしょうか。
めまいに伴って、耳鳴り、難聴、耳閉感といった耳に関わる症状が表れているなら、迷わず耳鼻科を受診してください。
この場合の症状は、はっきりしたものでなくてもよく、音の聞こえ方がいつもと違う、耳の奥に違和感があるなどの些細なことでも構いません。
一方、こうした耳の症状がない場合は、神経内科を受診することをおすすめします。

渡辺医院院長 渡辺繁
東大病院耳鼻咽喉科助手、JR東京病院勤務を経て1988年に渡辺医院開業。日本耳鼻咽喉科学会専門医。日本耳鼻咽喉学会・日本めまい平衡医学会所属。