女性のめまいと頭痛の関係性
「めまい」と「頭痛」。
一見するとあまり関係がないように思えますが、この2つの症状は、密接な関係にあるものなのです。
特に女性の場合、めまいを訴えて来院された方の話を聞いてみると、実は頭痛にも悩んでいることは珍しくありません。
本コラムでは、女性のめまいと頭痛の関係性についてご紹介します。
めまいを訴える女性の多くは、頭痛にも悩んでいる
通常、めまいを治したいと考えて病院を受診された方は、頭痛とめまいに関連性があることをご存知ありません。
長年にわたって片頭痛の症状に悩み、市販の頭痛薬を飲んで対処している方の多くは、「頭痛は持病、あるいは体質だから治らない」と認識してしまっています。
また、市販の薬を服用している方の中には、適切に服用できておらず、薬が症状を悪化させてしまう「薬物乱用頭痛」に陥ってしまい、悪循環になってしまっていることも少なくありません。
片頭痛とは無関係だと考えていためまいが、実は片頭痛の症状の一つという場合があります。
こうした場合、市販の薬を服用しているだけでは、片頭痛はもとより、めまいが改善されることはありません。
めまいと片頭痛に悩んでいるなら、まずは医師の診断を受け、適切な治療を受けることが重要なのです。
めまい・片頭痛が女性に多い理由
めまいや片頭痛は女性に多い症状ですが、これはホルモンバランスの変調が深く関わっていると考えられています。
月経時や更年期の女性にめまいや片頭痛が多いのはこのためで、女性のめまいを診断する際には、片頭痛の有無を確認することが必要不可欠です。
女性に多い片頭痛の症状
片頭痛は月経中に起こることが多いため、生理痛の症状だと誤解されている方も少なくありません。
以下では、片頭痛の特徴を記載します。
【頻度やきっかけ】
・月に1~2回、またはもっと頻繁に頭痛が起こる
・春先や秋口など、季節の変わり目に頭痛が起こりやすい
・低気圧が近づいてくると頭痛が起こりやすい
・月経の前後や排卵期に頭痛が起こりやすい
・頭痛の発作が起こるとき、光や音、においに敏感になる
【つらさの度合い】
・頭痛の発作が起こると、仕事や家事を続けるのがつらい
・頭痛の発作が起こると、動けない。動くと階段の上り下り程度の動作でも痛みがひどくなる
【症状の特徴】
・頭の片側または両側が、脈に呼応するようにズキンズキンと激しく痛む
・吐き気を伴い、実際に吐いてしまうこともある
・半日または1日中など、長時間続く
片頭痛の発作には特徴的な前兆がある場合も多い
片頭痛の方の約3割が、発作の前に特徴的な前兆が起こるとされています。
主な症状としては、あくびが出る、空腹感、肩や首の張り、めまい、ふらつき、吐き気といったもので、中には手足がしびれて感覚が鈍くなったり、言葉を発しにくくなったりということもあります。
また、片頭痛の発作のきっかけとして、前述の「光や音、においに敏感になる」ということ、さらに、チカチカした光が見える「閃輝暗点(せんきあんてん)」という現象があります。
閃輝暗点は、周縁がギザギザしたフラッシュのような光が視界に現れる現象で、その光は本人にしか見えません。
このような片頭痛発作の前兆は、血流の低下によって起こると考えられています。
発作のメカニズムは解明されきっていませんが、脳内物質のセロトニン(精神を安定させる神経伝達物質)の量が変化し、血管が激しい収縮と拡張を繰り返すことで起こる「血管説」と、ストレスなどの影響を受けた三叉神経から神経ペプチドという一種の痛み物質が放出され、それによって血管が拡張することで起こる「三叉神経説」の2つがあります。
いずれにしても、脳の神経が過敏になっていることから、視覚、聴覚、嗅覚などが刺激され、閃輝暗点のような視覚症状が起こったり、音に敏感になったり、めまいが起こったりというような、症状が起こると考えられています。
ご存知の方はまだ少ないかもしれませんが、めまいと頭痛は密接な関係にあるものです。
めまいの症状で医師の診察を行ける際に、「めまいと頭痛は関係ない」と自分で判断することなく、気になる症状は全て医師に伝えるようにしてください。
適切な治療を受けさえすれば、めまいはもちろん、長年悩んでいた頭痛も改善するはずです。

渡辺医院院長 渡辺繁
東大病院耳鼻咽喉科助手、JR東京病院勤務を経て1988年に渡辺医院開業。日本耳鼻咽喉科学会専門医。日本耳鼻咽喉学会・日本めまい平衡医学会所属。