耳鳴りを予防・改善する生活習慣【⑤リラックス編】
「耳鳴りを予防・改善する生活習慣【④リラックス編】」に続き、耳鳴りを予防・改善する生活習慣について、“リラックス”の観点から解説します。
音楽のある生活が耳鳴りを軽減するという事実
耳鳴りの「音響療法」の目的は、耳鳴りの感じ方を軽くし、その音に慣れて気にならなくすることにあります。
そのために取るのが、あえて適度な音量の音を聞くことで、耳鳴りの音を相対的に目立たなくする方法です。
専用の治療器具として、耳に装着するマスカー(ノイズが出る器具)や補聴器(サウンドジェネレーター)が使われますが、こうした器具がなくても、生活空間に音を流すと、治療に準じた効果が期待できます。
環境音があまりない静かな環境だと、耳鳴りは特に際立って聞こえるものです。
しかし、そこに別の音を入れると、同じレベルの耳鳴りでも、それほど大きく感じなくなるケースが多いのです。
BGMを流す、ラジオを聞く、テレビを見るなど、さまざまな方法で積極的に音のある環境を作ると、耳鳴りが気にならなくなります。
ただし、流す音は大きすぎてもいけません。
自分の耳鳴りが「わずかに聞こえる」くらいの音を流し、その中で耳鳴りに慣れていくのです。
一般に、癒し系のBGMとして人気がある自然の音などがこの方法に適しています。
「考え方」を変えるだけでも耳鳴りはよくなることがある
耳鳴りの治療では、適切な薬物療法、そして音響療法とともに、「カウンセリング」がとても重要です。
なぜそんなに重要かと言えば、患者さんの「考え方」が変わるだけでも、耳鳴りは軽くなることが多いからです。
カウンセリングは、医師の立場から言えば、患者さんの感じている耳鳴りの状態やその変化を正しく理解し、適切な治療を進めていくうえで欠かせません。
一方、患者さんは、医師との対話を通じて耳鳴りへの理解を深め、治療の目的などを正しく理解することができます。
しかも、それだけではなく、耳鳴りへの先入観や誤解などが正され、「考え方」が変わると、耳鳴りに対する「感じ方」が変わっていくのです。
実は、ここにとても大事なポイントがあります。
たとえば、耳鳴りに対して余計な不安がなくなれば、ストレスと耳鳴りの悪循環が断ち切れることがあります。
そして、同じレベルの耳鳴りが聞こえていても、「大したことではない」と受け入れることが容易になるのです。

渡辺医院院長 渡辺繁
東大病院耳鼻咽喉科助手、JR東京病院勤務を経て1988年に渡辺医院開業。日本耳鼻咽喉科学会専門医。日本耳鼻咽喉学会・日本めまい平衡医学会所属。