耳鳴りにも種類がある!「自覚的耳鳴り」と「他覚的耳鳴り」の違い

耳鳴りは、いくつかの種類に分類することができます。
その中の「自覚的耳鳴り」と「他覚的耳鳴り」の違いについてご紹介します。
自覚的耳鳴りとは
自覚的耳鳴りとは、文字通り自分にしか聞こえない耳鳴りのことです。
一般的に「耳鳴り」というと、こちらのイメージが定着しているかもしれません。
実際のところ、耳鳴りの大半は自覚的耳鳴りです。
自覚的耳鳴りの多くは、内耳や聴神経などの「感音器」と言われる部分の異常が原因となり、難聴とともに発生することがほとんどですが、まれに過労やストレスによって引き起こされる場合もあります。
通常、内耳にある蝸牛という器官が、音の振動を電気信号に変えて神経に伝えることで、脳が「音」として認識します。
ところが蝸牛にトラブルが生じると、音の信号伝達がうまくいかなくなり、そのために脳が音を聞き取ろうとして過敏になり、耳鳴りが発症するのです。
自覚的耳鳴りは自分にしか聞こえていない音なので、治療を受ける際には、音の大きさや種類(どんな音が聞こえるか)など、できる限り詳細に医師に伝えるようにしてください。
他覚的耳鳴りとは
一方、他覚的耳鳴りとは、他の人にも聞こえる耳鳴りのことです。
この場合、あなたの耳と医師の耳を器具でつなぐと、医師にもあなたの耳鳴りが聞こえます。
他覚的耳鳴りは2種類あり、間欠的な耳鳴りと持続的耳鳴りに分類されます。
間欠的な耳鳴りでは耳の周囲の筋肉が痙攣する音(プツプツ、コツコツ)が聞こえ、持続的な耳鳴りでは血液の流れる音(ドクンドクン、ザー)音が聞こえます。
高血圧、血管病変、腫瘍など、さまざまな原因が考えられますが、いずれにしても医師の診察を受けることをおすすめします。
高音性耳鳴りと低音性耳鳴りの違いとは
この他にも、聞こえる耳鳴りの音で分類することがあります。
高い音が響いているように聞こえるのが「高音性耳鳴り」、耳の中で低い音が鳴っているように聞こえるのが「低音性耳鳴り」です。
高音性耳鳴りは、「キーン」や「ピーッ」という金属音や電子音のような音が聞こえ、耳をふさぐと耳鳴りが大きく聞こえるのが特徴です。原因としては、加齢による「老人性難聴」や、騒音のする職場で働き続けていると起こる「騒音性難聴」などが考えられます。
低音性耳鳴りでは、耳が詰まったような感じを伴い、「ブーン」や「ゴーッ」という低い音が聞こえます。気圧が急に変わったときや、ストレスがたまったときに起こりやすい症状です。
実際に耳が詰まってしまっている「中耳炎」や「耳垢塞栓」が原因の場合がありますが、「メニエール病」や「突発性難聴」も低音性耳鳴りの原因となります。
たかが耳鳴りと油断せず、早めの診察を

四六時中音が聞こえ続けて、静寂の中にいられないというのは大変つらいもの。
さらに、そのつらさを周囲の人に理解してもらうのが難しいという点も、耳鳴りの厄介なところです。
やがて耳鳴りは、ストレスとなってあなたの心を蝕(むしば)んでしまうかもしれません。
耳鳴りでストレスを覚え、そのストレスが自律神経に悪影響をもたらし、耳鳴りがさらに悪化するという悪循環に陥ることも考えられます。
耳鳴りは多くの場合、特に身体的な害はなく、ほとんど心配のないもの。
しかし、まれに聴神経などの重篤な病気の初期症状である場合も考えられるので、油断は禁物です。
もしくは、突発性難聴などの、治療にとりかかるのが早ければ早いほど治りやすい病気の症状として現れているのかもしれません。
ですから、もし「耳鳴りがするな」と思ったら、まずは耳鼻科で診察を受けてみましょう。
特に、突然耳が聞こえなくなった、激しいめまいにみまわれた、耳鳴りと頭痛が併発しているなどの場合は、急いで受診するようにしてください。

渡辺医院院長 渡辺繁
東大病院耳鼻咽喉科助手、JR東京病院勤務を経て1988年に渡辺医院開業。日本耳鼻咽喉科学会専門医。日本耳鼻咽喉学会・日本めまい平衡医学会所属。