渡辺医院の薬物療法
耳鳴りの治療では、薬物療法や音響療法、カウンセリングと補聴器によるTRT療法、心の負担を軽くする心理的アプローチなど、さまざまな治療法が用いられます。
どれか一つが行われることもあれば、複数を組み合わせて行うこともあり、患者さんの状態に合わせて、適切な治療法が選択されます。
本コラムでは、その中でも心身のつらい症状を軽減するために使用される、耳鳴りの薬や処方について、当クリニックを例に挙げてご紹介します。
ヒアリングによって適切な薬を処方する
耳鳴りの治療において、渡辺医院では綿密なヒアリングによって、患者さんの最もつらい症状を緩和する薬を選びます。
耳鳴りでよく処方されるのは、末梢血管系統の循環を改善する「カルナクリン」、神経細胞の修復を促す「メチコバール」、内耳の循環を改善する「アデホス」の3つで、この他に患者さんの症状に合わせて必要な薬を選んでプラスします。
例えば、耳鳴りが気になって不眠傾向にある方には抗不安剤や入眠剤、耳鳴りがメニエール病に起因するものなら内耳の代謝を良くする利尿剤、頭痛がある方にはカルシウム拮抗剤、さらには、当帰為薬散(更年期障害に伴う頭痛、めまい、肩こりの薬)や茶詰状甘陽(めまい、頭痛の薬)といった漢方を処方することもあります。
耳鳴り治療において、薬が使われるのは一般的で、大抵の患者さんは何らかの薬を処方され、服用しています。
耳鳴りは内耳が浮腫むことによって起こることがあり、それを改善するために循環を改善するための薬が必要な場合も多くみられます。
「この病気だからこの薬」いうように単純に決められるものではなく、あくまでも一人ひとりの患者さんからヒアリングした情報をもとに、最も適した薬を処方するのが渡辺医院の特徴です。
市販の薬は効かない?
市販の薬や漢方薬の中にも耳鳴りの症状に有効な成分が含まれたものがあります。市販の薬であっても、耳鳴りが悪化する前の段階でしたら、効果を感じることもあるでしょう。
これは、初期段階の耳鳴りであれば市販の薬で事足りるというわけではなく、耳鳴りは感覚器官の病気なので、患者さんごとに合う薬、合わない薬があるということです。
医師のアドバイスだけで耳鳴りが気にならなくなることもありますし、市販の薬で改善することもあります。
しかし、市販の薬で効果が感じられないのであれば、早めに医師の診断を受けるべきだといえます。
院内処方のメリット
渡辺医院では、院外の処方箋薬局ではなく、院内処方をしています。
通常は、院外処方=医薬分業が基本ですので、渡辺医院のようなクリニックはあまり多くないのが現状です。
院内処方の最大のメリットは、何といっても、患者さんとの密なコミュニケ―ションが可能なことでしょう。
例えば薬を渡す際に、一声かけて渡すか、患者さんが薬に対して抱く疑問や不安にどうやって答えるか。
耳鳴りは他人に理解してもらうのが難しい症状ですので、こうしたコミュニケーションが非常に重要です。
また、院内処方なら、カルテの情報を確認しながら薬を渡すことができるので、的確な説明や患者さんからの質問にも答えられます。
耳鳴りは単なる耳の症状ではなく、心のケアも重要になるものですので、患者さんとのコミュニケーションは必要不可欠なのです。

渡辺医院院長 渡辺繁
東大病院耳鼻咽喉科助手、JR東京病院勤務を経て1988年に渡辺医院開業。日本耳鼻咽喉科学会専門医。日本耳鼻咽喉学会・日本めまい平衡医学会所属。