なぜ多い?耳鳴り患者の“ドクターショッピング”
耳鳴りは、ストレスのタネになるものです。
静かにしていたいとき、リラックスしているとき、仕事をしているとき――そんなときに耳鳴りの音がずっとしていては、気が休まらないでしょうし、何かに集中することも難しいでしょう。
体調が悪ければ、病院に行って診察を受けるのはごく自然なこと。
耳鳴りがするときには、耳鼻科にかかる人が多いのではないでしょうか。
「ドクターショッピング」という言葉をご存知ですか?

近年耳にすることが増えた、この「ドクターショッピング」とは患者自身が思い描く、納得できる治療を求めてさまざまな医療機関を渡り歩くことをいいます。
実は、耳鳴り患者には「ドクターショッピング」をする人が多いといわれています。
ドクターショッピングとセカンドオピニオンの違い
セカンドオピニオンと何が違うのかと思う方もいるでしょう。
しかし、この2つはまったく異なる意味を持つ言葉です。
セカンドオピニオンとは、現在かかっている医師とは別の医師の意見を聞くことを指します。たとえば主治医からある手術を提案されたが、どうしても手術を受けることに不安があり、他の医師の診察も受けてみるというようなケースです。
それに対してドクターショッピングは、Aクリニックで受けた治療や医師から言い渡された診断にどうしても納得がいかず、B医院を受診する。しかしそれでも満足できず、さらにC病院にも行ってみる、ということを繰り返すケースのことをいいます。
耳鳴り患者がドクターショッピングすることが多い理由
では、耳鳴り患者がドクターショッピングを行うことが多いのはなぜでしょうか。
ドクターショッピングのきっかけになる不満には、以下の3つがあります。
1.医師の診療態度についての不満
症状を訴えても、十分に話を聞いてもらえない
2.検査・治療に対する不満
検査を十分にしてもらえない
「治療法はない」と言われてしまったが、本当だろうかと不安になる
診察はしてくれたが、症状の緩和のためにどうすればいいか教えてくれなかった
3.診断結果に対する不満
「原因はよくわからない」と言われた
「脳の病気ではないですか?」「違う病院に行ってください」と言われた
「気にしなければいい」と言われたが、どうしても気になる
耳鳴り患者がドクターショッピングをしがちな理由――それは、耳鳴りが「治療法がない」といわれることが多いからです。
つらい耳鳴りに苦しめられて病院に行ってみると、「耳鳴りに治療法はありません」「耳鳴りは、慣れるしかないですね」と、突き放されるように言われてしまう、もしくは、「気のせいではないですか?」と言われてしまう、病気のプロである医師にさえ理解してもらえない――そのような経験を経て、耳鳴り患者が「もっと自分のことをわかってくれる医師がいるはず」とドクターショッピングを繰り返してしまうのです。
耳鳴りの治療のために足を運んだ医療機関で、このような冷たい言葉をかけられる可能性があるかもしれませんし、なかなか理解してもらえないことによるストレスで、より耳鳴りがひどくなることもあるでしょう。
でも、耳鳴りは決して気のせいではありませんし、治療法がないわけではありません。
あなたの話をきちんと聞き、親身になって診察・治療してくれる医師に出会ってほしいと思います。

渡辺医院院長 渡辺繁
東大病院耳鼻咽喉科助手、JR東京病院勤務を経て1988年に渡辺医院開業。日本耳鼻咽喉科学会専門医。日本耳鼻咽喉学会・日本めまい平衡医学会所属。