今すぐ、どこでもできる“音響療法”のポイント
耳鳴りの音響療法とは、耳鳴りとは別の音を聞くことで、耳鳴りの音に慣れる治療法のことをいいます。
音に「慣れる」ことをゴールにする分、時間はかかりますが、効果のある治療法として知られています。
今回は、家庭でできる音響療法についてご紹介しましょう。
“積極的に音を聞く”ことがポイント
この方法は、今すぐ試していただけます。
テレビを観たり、ラジオを聴いたり、人と話したりするなどして、積極的にいろいろな音を聞きましょう。さまざまな音を聞くことで、そちらの音に集中する状況を作り出します。そうすると、相対的に耳鳴りの音が際立たなくなるというわけです。
この音響療法のポイントは、以下の二つです。
①静かな状態をつくらない
②さまざまな種類の音に囲まれている状態を維持する
このとき、長時間聞いていても苦痛ではない、リラックスできる音を選びましょう。
たとえば、川のせせらぎや鳥のさえずりなどの森の音、波の音など、自然の音が収録されたCDなどがおすすめです。
こういった音を聞き流していると、耳鳴りの音が緩和されることがわかるでしょう。
このとき、耳鳴りより大きな音を流すのではなく、耳鳴りよりもやや小さめの音量にし、耳鳴りの音を紛れさせるようにすることもポイントです。
なぜなら、この治療法の目的は、耳鳴りの音に「慣れること」だから。
耳鳴りの音は常に聞こえているが、気にならないという状況を目指すのです。
人工音を出す「サウンドジェネレーター」を利用する

上記のような音響療法は、公共の場や、誰かと会っているときは実行するのが難しいこともあります。とはいえ、静かな環境に身を置いていると、耳鳴りの音が気になるでしょう。
そんなときに使うのが、サウンドジェネレーターという治療器です。
サウンドジェネレーターは、人工音を流すことにより、耳鳴りの音を軽減させる器具です。使い方は、耳に取り付けるだけと非常に簡単です。音量は、あなたに聞こえている耳鳴りの音にあわせて調節することができます。
難聴の方には補聴器が効果を発揮
音響療法の基本的な考え方は、耳鳴り以外の音を聞くことで、耳鳴りの音を軽減させること。
ただし難聴の方は、聞き取れる音が少ないため、かえって耳鳴りの音が際立ってしまうでしょう。
そんな場合におすすめするのは、補聴器をつけることです。
補聴器をつけると聞き取れる音が増えますから、自然とさまざまな音が聞こえ、耳鳴りの音が目立たなくなります。聞き取れる音の領域を広げ、耳鳴りが気にならない環境をつくりましょう。
場合によっては、「コンビ補聴器」を試してみるのもいいでしょう。
コンビ補聴器とは、補聴器とサウンドジェネレーターの機能をあわせもつ機器です。
今まで聞こえなかった音を拾う補聴器機能と、別の音を聞かせるサウンドジェネレーターの両方がはたらくことで、いっそうの効果が期待できるといえます。
これらの方法は、決して手間がかかる方法ではありません。
いろいろと試してみるなかで、自分にぴったりの方法を探すことをおすすめします。少しずつ、耳鳴りが気にならなくなるでしょう。

渡辺医院院長 渡辺繁
東大病院耳鼻咽喉科助手、JR東京病院勤務を経て1988年に渡辺医院開業。日本耳鼻咽喉科学会専門医。日本耳鼻咽喉学会・日本めまい平衡医学会所属。